30年で、火葬率20%→94%
まず、この数字の変化に驚かされます。
| 時期 | 韓国の火葬率 |
|---|---|
| 1990年代半ば | 20%ほど |
| 2001年 | 38% |
| 2007年 | 59% |
| 2024年 | 94% |
韓国はもともと、儒教の伝統から土葬(遺体をそのまま埋葬する)が主流の社会でした。先祖の墓を山に構え、一族で守るのが当たり前だったのです。それが30年ほどで、ほぼ全員が火葬される社会に変わりました。日本のように長い時間をかけて移り変わったのではなく、一世代のうちに起きた急激な変化です。
なぜ、そこまで急いだのか

背景にあるのは、切実な土地の問題です。韓国の国土面積は日本の約4分の1しかなく、しかもその約7割が山岳地帯です。土葬の墓は一基あたりの面積が大きく、増え続ければ国土を侵食していきます。
そこで韓国政府は、2000年に公布した「葬事等に関する法律」(施行は2001年)で、墓地の増加による国土の毀損を防ぐため、火葬と納骨を広める施策を国の責務として定めました。同時に、それまで無期限だった墓の設置期間に上限を設け、期限が切れた墓は改葬しなければならないことにしました。
この設置期間の上限は制度改正を重ねており、近年の報道では「原則15年、延長は一度限りで最長30年」と説明されています。法律施行から年月が経ち、2029年までの5年間で70万基以上が期限を迎えると報じられています。遺族が遺骨を引き取らなければ、無縁仏として一括で処理されます。日本の「墓じまい」が、国全体の規模で一斉に起きようとしているわけです。
「自然葬」を法律で定めた

火葬が急増すると、今度は遺骨の行き先が問題になりました。納骨堂が各地に乱立し、それ自体が新たな社会問題になったのです。
その対策として、2007年に公布・2008年に施行された改正法で、韓国は「自然葬」という概念を法律に書き込みました。法律上の定義はこうです。
火葬した遺骨の骨粉を、樹木・花草・芝生などの下に埋めて葬ること
ここが決定的に重要な点です。韓国の自然葬は「撒く」のではなく「埋める」ものとして定義されました。日本の樹木葬と同じく、散骨とは別のものとして制度化されたわけです(日本の樹木葬の仕組みは「樹木葬という選択肢」をご覧ください)。
国が樹木葬林をつくった

韓国の樹木葬でとりわけ特徴的なのは、国有林を使った公的な樹木葬林があることです。京畿道の国有林に設けられた国立の樹木葬林は、面積55ヘクタール。開設当初の時点で、すでに700人以上が利用し、2000人以上が予約していたと記録されています。
日本では、樹木葬は民間の霊園やお寺が提供するものがほとんどで、「国が森を用意する」という発想はまだ一般的ではありません。ここは日韓で大きく異なる点です。
いま、韓国で起きていること
国策として広げてきた自然葬ですが、現在はすでに飽和状態にあるとも報じられています。火葬率94%の社会で毎年生まれる遺骨の量に対し、受け皿が追いつかなくなってきたのです。
そうしたなか、韓国では2025年1月に海洋散骨が合法化されました。土葬 → 火葬・納骨 → 樹木葬などの自然葬 → そして海へ。土地の制約に追われるように、遺骨の行き先が次々と移ってきた流れが見てとれます。
日本から見て、何が読み取れるか
韓国の歩みは、日本にとって「起こりうる未来の一例」として参考になります。
- 変化は、想像より速く来る:20%から94%へ、たった30年。日本でも、お墓を継ぐ人がいない世帯は年々増えています。
- 「自然に還る」は、必ずしも心情だけの選択ではない:韓国の自然葬は、個人の希望というより国土の制約から生まれた面が強くあります。日本の樹木葬・散骨の広がりにも、同じ力学が働いています。
- 新しい受け皿も、いずれ埋まる:樹木葬なら永久に安心、とは限りません。合祀の時期や管理の継続性を契約書で確認する重要性は、ここからも読み取れます。
一方で、大きな違いもあります。韓国の変化は法律と国の施策が引っ張ったのに対し、日本の散骨には現在も法律の規定がなく、事業者向けガイドラインと自治体の条例で運用されています(「法律とマナー」参照)。同じ「自然に還る」でも、社会がそれを支える仕組みの作り方は国ごとに違うのです。ほかの国の事情は「海外の散骨事情」で7か国を比較しています。
まとめ
- 韓国の火葬率は1990年代半ばの約20%から、2024年には94%へ。
- 国土の狭さを背景に、法律で墓の設置期間に上限を設け、火葬と自然葬を国が推進した。
- 2008年施行の改正法で「自然葬」を法制化。散骨ではなく「樹木や草花の下に埋める」方式。
- 国有林を使った国立の樹木葬林があるのが、日本との大きな違い。
- その自然葬も飽和が指摘され、2025年1月には海洋散骨が合法化された。
ご注意:本ページは日本語で公開されている資料をもとにした一般的な紹介です。韓国の制度は改正を重ねており、数字や規定は時点によって異なります。実際の手続きや最新の内容は、韓国の公的機関の案内をご確認ください。
参照した公開情報(2026年8月9日確認)